予防的補綴修復

     

    二次う蝕(2次カリエス)を防ぐ、予防的な補綴修復治療

    全く何も治療をしていない歯よりも、一度治療した歯の方が虫歯になりやすい、ということをご存じでしょうか?

    一度治療をした歯が再び虫歯になってしまうことを「二次う蝕(2次カリエス)」と呼びますが、スウェーデンのイエテボリ大学の研究データによると、二次う蝕による虫歯再発確率は約80%にものぼるという研究結果も出でいます。

    二次う蝕の原因は、従来までは補綴物の適合の良否や歯科用セメントの劣化などが原因とされてきましたが、最近では、「咬合力」と「細菌」が主たる原因として考えられるようになりました。 具体的には、繰り返し行われる咬合の力によって補綴物と歯の間に歪みが生じ、そこに隙間が出来てしまう事(辺縁漏洩・へんえんろうえい)により、その隙間から細菌が侵入して二次う蝕を発症させるというものです。

    つまり、二次う蝕を防ぐ予防的な補綴修復治療を考えた場合、

    1,咬合力によって引き起こされる歪みを最小限に抑えること
    2,歯面と補綴物の間を確実に封鎖し、細菌の侵入をブロックすること

    がポイントとなり、これらを踏まえた材料の選択と接着技術が不可欠であると考えています。

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    1,咬合力による歪みを最小限に抑える

    咬合力による歪み

    天然歯においても、象牙質とエナメル質のような物性の異なる歯質が接合している部分では、応力集中により歯質の破損が起きる

    従来、補綴修復においては修復材料自体の強度に重点がおかれ、セメントを介して歯と接着した場合の力学的な安定性に関しては、あまり注意が払われてきませんでした。
    しかし実際には、細菌の侵入による二次う蝕はもちろん、修復物の破損や脱落などのトラブルの中にも、修復材料、セメント、歯質の間に力学的な不調和に起因するものが多数存在しています。

    つまり、二次う蝕や破損や脱落といったトラブルを防ぐためには、修復材料単体の物性だけではなく、それらを歯と接着させた複合体としての物性も重要と考えなくてはいけません。

    材料力学的には、その性質が天然歯と近似した機能性・衝撃耐久性を有する材料を使用することが理想的で、咬合力の強いケースであるほどその傾向が強くなります。
    例えば、歯ぎしりや食いしばり等の習慣があるなど、咬合力の強い方の場合、金属等の強靭な材料よりも、より歯質に近い性質を持つハイブリットセラミックとレジン支台の組み合わせの方が接着面が安定し、細菌の侵入による二次う蝕を予防することが出来ます。

    咬合力の強い方は、ハイブリット系の補綴物は割れやすいのではと不安に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、ハイブリットを含むセラミック材料の強度は、接着剤で歯と接着させることによって補強されるため、接着に用いる材料やテクニックによって破損や脱落を防ぐことも出来るのです。
    当院では、「ADゲル法」という歯面処理法と、適した接着剤の使い分けにより、咬合力に負けない接着安定性を実現する設計を行っております。

    →ADゲル法について、詳しくはこちら

     

    2,細菌の侵入をブロックする

    予防的補綴修復

    材料の適切な選択により咬合力による歪みを最小限に抑えることが出来ても、性質の異なる物質を併せる以上、微細な隙間は発生してしまいます。
    そういった隙間を封鎖し、密着させるために欠かせないのが、高い接着力と耐久性を兼ね備えた接着剤の使用と接着技術の適応です。

    歯科用接着剤の研究はこの20年の間に目覚ましく進歩し、現在ではお口の中で繰り返し行われる咬合圧や温度変化といった過酷な環境に耐えうる優れた耐久性、接着力を持つ材料がいくつも開発されています。
    しかしながら、臨床の現場ではまだまだ問題は残されており、特に「う蝕象牙質第二層(無菌層)」と呼ばれる部分に使用した場合は、その接着力や耐久性が充分に発揮できないことも指摘されています。

     

    う蝕象牙質第二層(無菌層)とは
    象牙質の虫歯は、さらに細かく分類すると、細菌感染のある第一層(多菌層→寡菌層→先駆菌層)と、細菌感染のない第二層(混濁層→透明層→生活反応層)に分かれています。
    第二層には褐色に変色した部分も含まれているため、従来はこの着色した部分はすべて感染している象牙質と考え、徹底的に除去して修復することが基本とされてきました。
    しかしながら現在は、虫歯の研究の発展により、仮に着色していても細菌感染していないことが判明された第二層に関しては、なるべく歯を残すミニマルインターベンション(Minimal Intervention)の考えに基づき、この部分は削らずに残すべきとの考えが主流になっています。
    当院でも、細菌感染がなく、さらに再石灰化も可能なう蝕象牙質第二層はなるべく残す方針を採用しています。

    接着力や耐久性が発揮できない理由
    歯科用接着剤の接着力や耐久性を向上させるために重要な役割を果たしているのが、「樹脂含浸層」と呼ばれるものです。
    樹脂含浸層とは、象牙質に歯科用接着剤が浸透することで、象牙質を構成する成分であるコラーゲンやハイドロキシアパタイトなどと絡み合って生成される層を言います。
    樹脂含浸層は、酸にも溶けず、エナメル質と同様に外部からの刺激を遮断し、内部の象牙質や歯髄を保護する役割も果たすという特殊な性質を持つ層で、象牙質への接着にはこの樹脂含浸層の存在が極めて重要な役割を果たすことが研究により明らかとなっています。
    しかしながら、この樹脂含浸層は、健全なコラーゲンと接着剤の融合によって生じるものですので、健全な象牙質にしか形成されないことが明らかになっており、う蝕象牙質第二層(無菌層)に対しては健全象牙質で観察されるような良好な樹脂含浸層を獲得することが出来ません。
    つまり、新しく発生した小さな虫歯や、二次う蝕の場合であっても健全な歯質部分が多く残っている歯であれば問題はありませんが、実際の臨床現場で多く見られるような深い虫歯や、褐色に変色した象牙質に対しては、その接着力や耐久性を発揮しきれないという問題が、いまだに残っているのです。

     

    プロケア

    ADゲル法とは、ADゲル(40%リン酸と10%次亜塩素酸ナトリウムゲル)を用いて象牙質の歯面処理を行う技法を言います。
    ADゲルを用いることにより、汚染された歯面の殺菌と同時に、変性したコラーゲンなどの有機質を除去することが可能です。

    有機物が除去されて粗造化した歯面の凹凸から、接着剤が深く侵入することが出来ますので、象牙質とセメントが強固に結合し、高い接着力と耐久性を得ることが出来ます。
    これにより、これまで接着剤のみでは充分な接着力や耐久性が獲得できなかったケースであっても、接着前の歯面処理としてADゲル法を用いることで強固な接着耐久性を獲得し、安定した長期的封鎖を実現することが可能になります。

     

    歯質強化のアプローチ

    二次う蝕を回避するには、咬合力による歪みを抑え、歯と補綴物の間の隙間を確実に封鎖することが重要となりますが、実際の臨床現場においては、全ての術者が常に接着による完璧な封鎖を達成することは、かなり困難であることも事実です。
    また、良好な接着がされていたとしても、年齢を重ねるにつれて歯肉が下がり、歯根が露出して根面う蝕になってしまうケースや、補綴物と歯の境界部分(マージン部)近くに発生した根面う蝕が広がって、マージン部から歯の内側へ侵入していくことによって二次う蝕に進展するケースも少なくありません。

    予防的補綴修復

    そこで、歯肉退縮によって根面が露出してしまったり、万が一接着による封鎖が破れて細菌が侵入してしまった場合でも、虫歯が発症しにくいような第二の壁として「歯質の強化」のための予防的処置を施すことが有効です。

    具体的には、歯の表面にある「ハイドロキシアパタイト」という成分を、酸に強い「フルオロアパタイト」という成分に改質することで、根面う蝕の発生や二次う蝕を予防します。
    ハイドロキシアパタイトは、フッ素を取り込むことによってフルオロアパタイトに変化するため、フッ素が徐々に放出する性質である「フッ素徐放性」のある材料を利用することで歯質の強化をはまります。

     

    根面う蝕を予防する

    予防的補綴修復

    フッ素徐放性シーラント材とADゲルを併用した耐酸性層の形成

    根面う蝕に罹っている人の割合は年々増加傾向にあり、2017年の調査研究によると、日本の70代の約65%、80代の約70%が根面う蝕に罹患しているというデータもあります。
    その原因としては、加齢による歯肉退縮により、根面が露出してしまう事のほか、薬の副作用としての唾液減少などが広く知られていますが、最近では根面を覆っているバイオフィルムが根面う蝕を発生させるとの研究結果も出されています。
    バイオフィルムに覆われると簡単なブラッシング程度では除去することが出来ないため、細菌が歯の内部深くまで入り込んでしまい、虫歯が進行してしまうというものです。

    従来、根面う蝕の予防方法としては、フッ素入りの歯磨き剤などを利用して歯質を強化する方法がとられてきましたが、これらの方法は患者さん自身の日常的な努力に依存する方法であるため、確実性が乏しく短期間でも効果を望むこともできませんでした。
    また、歯科医院で行う処置として、露出した根面をレジン材料で覆うことで婚面う蝕を予防する方法も考案されましたが、この方法は歯の内部に入り込んでしまった細菌を除去しないまま覆ってしまうため、歯の神経に炎症が起きてしまうケースもあり、予知性の高い方法とは言えませんでした。

    そこで開発された予防処置法が、フッ素徐放性シーラント材とADゲルを併用した耐酸性層(酸に溶けにくい層)形成の構築です。
    まずは、根面を覆っているバイオフィルムと、歯の内部深くまで入り込んでしまった細菌を除去するために、ADゲルによる歯面処理を行います。
    歯の表面と内部の細菌を完全に殺菌した後、フッ素徐放性のある「シーラント」と呼ばれるコーティング剤で根面を封鎖することで、細菌の侵入をブロックすると同時に、放射されるフッ素による歯質強化を図ります。

     

    根面う蝕からの二次う蝕を予防する

    予防的補綴修復

    フッ素徐放性接着剤とADゲルを併用した耐酸性層の形成

    根面う蝕から二次う蝕に進展したり、万が一接着による封鎖が破られてしまった場合、たとえ細菌が侵入しても虫歯が発症しにくい環境を作るには、歯質に耐酸性(酸に溶けにくい性質)を形成することが有効です。

    フッ素徐放性接着剤とは、フッ素を徐々に放出する性質を持つ接着剤のことで、これを歯と補綴物の接着に使用することで歯にフッ素が取り込まれ、歯質の強化を図ることが出来ます。

    フッ素徐放性接着剤は単独での使用でもその効果を得ることが出来ますが、ADゲル法による歯面処理と併用して処置することで、歯質へのフッ素取り込み量が約2倍にもなることが研究結果から分かっており、より高い二次う蝕予防効果が期待できます。

    当院では、このような二重三重の防御機構を備えることによって、二次う蝕を引き起こさせない予防的補綴修復を実践しております。

     

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